いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「…それはそう、だったんだけど……まだ陸とは話、出来てないの」

「あれ、どうして?」

「そのあと今日の打ち合わせがあるからって、陸は周さんに呼ばれて…すぐ行かなきゃならなかったから」

そのため、今日は陸とろくに顔を合わせていなかった。

今朝も邸全体が慌ただしそうだったため、皆の邪魔にならないよう病院に行くことにしたのだ。

「そうなんだ…じゃあこの調子だと暫くは時間が取れなさそうだね。領主の家柄ってのもなかなか大変そうなんだなあ。炎夏ではそんな感じしなかったけど」

そのとき、ふと廊下を歩く若い女性看護師たちの会話が聞こえてきた。

「――愛梨様、久しぶりにお姿を拝見したけど相変わらずお綺麗よねぇ。憧れちゃうわ」

「ね~。それに陸様も、あんなにかっこよくなってて驚いちゃったあ。昔は女の子みたいな可愛い系だったのに」

「そうねえ。でも私は京様派かなぁ、優しげで落ち着いた雰囲気が素敵なのよ」

「ああ~、あんたの好みってそうよね~。まあどっちにしろ、お二人ともあたしたちなんか相手にしないでしょ。きっと何処かの令嬢と結婚されるわよぉ」

「…!」

その言葉に、ずきんと胸が痛む。

「あら、愛梨様だって平民出よ」

「愛梨様程の美人だったら例外よぉ!私やあんたはお二人の目にも止まらないわぁ」

「それもそうよね。もう婚約者だって決まってるかも知れないし、元々恋人だっていてもおかしくないわよね」

「でもあたし、陸様のこと見掛けたら絶対に声かけちゃうな~」

「まあね。領主子息な上にあんな美形なんだもの、何としてもお近付きになりたいところだわ」
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