君の一部を下さい。
外灯の少ない地域に、一際目立つ建物が、彼の住居。
6階建てのデザイナーズマンション。
玄関へ続く階段には、お洒落なライトが無数に散りばめられている。
彼の部屋は5階。
入ったこともないのに、なぜ知っているかなんて、それは愚問。
彼の部屋に入ったことがないだけで、この共同玄関のオートロックなんて入るのは容易いことなのよ。
彼女を部屋に上げずに、他の女は部屋に上げる。
最近は、短めショートボブに華奢とは言い切れないが、スレンダーな体。唇に艶があるのが特徴の女がよく出入りしている。
今月半ばだというのに、もう8回。
彼と付き合って1年8ヶ月だというのに、あたしは未だに彼の部屋には上げてくれない。
そう、彼は意地悪だ。わざと、あたしを試す。
俺のこと、ちゃんと愛してる?と。
それじゃなきゃ、彼女がいるのに他の女を部屋に上げるなんて理由がないじゃない。
愛しているわよ、誰よりもーー
貴方の為なら、何でも出来るわ。