君の一部を下さい。
遠くからコツコツと、ヒールが地面を蹴る音が聞こえる。
そう、あの女が来る。
最新のシャネルのハイヒールを足に履き、手にはこれまた最新のシャネルのバッグ。
玄関のライトの光を利用して、手鏡で確認しながら自慢の唇に、シャネルのリップを滑らせている。
ーー悪趣味な女だと思う。
自分は高級志向なんだと、彼に示す為にそこまで。
彼は、高級志向な女は好きではない。
コンビニで買った肉まんを幸せそうに頬張る男なのだから。
ふっと、勝ち誇った笑みが漏れる。
たかだか1980円の靴に、こんなにも優越感に浸れるのはあたしだけ。
だってそうでしょう?
彼は高級な女は嫌い。あたしみたいな素朴な女が好きなのよ。
アンタはただのお遊び。