君の一部を下さい。
それなのに、心に湧き上がる憎悪。
彼はあたしのなのよ?
ねぇ、あたし、そろそろゲンカイよ?
結婚の約束、してくれたわよね。
可愛らしい誕生石のついた小さなダイヤのついたリングを、給料の3ヶ月分だと、言ってくれたわよね?
あぁ、待つだけはツカレタノ。
マンションに人が入るのを見計らって、さもこのマンションの住人のようにパタパタと足早にオートロックをすり抜ける。
5階。彼の部屋は角。
いつも見ているのよ。分かるのよ。
そろそろ、あたしをその女に紹介してもいいじゃない。
ピンポーンーー
やけに響くインターホンが、耳に絡み付く。
静寂を保つこの場所にあたしの足を譲る音だけが響き渡る。
ドアを開けた彼は、とても驚いた顔をしていた。
一気に部屋に駆け上がると、我が物顔でキッチンに立つ女に、また一つ憎悪が。
そのキッチンはあたしの場所よ。
彼に毎日ご飯を作る場所。
ねぇ、なぜ、貴女が立っているのよ。
ーー彼の叫ぶ声が聞こえた。
顔を歪めてうずくまる女を見下ろすのは気持ちがいい。
これで、彼はあたしのもの。
これで、彼は、あたしのものよ。