もう一度、あの夏にもどれるなら。
・・・莉子side・・・

お茶を入れて軽めの朝食を準備していると日向や早苗達が戻ってきた。

正宗やハルの「後片付け」をしていたのだと言う。

皆に朝食をふるまう。やっぱり食欲がないのかな?あんまり進んでないや。

「……一段落、ってわけでもないけど。ちょっと話していいかしら?」

早苗が切りだした。うん、いいよ。そう言ったつもりだけど思った以上に声が小さかった。

他の人も頷く、声に出して返事をする、目で合図を送る。答え方は様々だ。

「ありがと。それじゃあ今回の…政宗とハルの事についてッて言うのは皆分かってるわよね。その事についてなんだけど。」

「まず政宗は一酸化炭素中毒で間違いないと思う。コレは部屋の中に練炭があったの。さすがに真夏に部屋にこもって練炭…は少し不自然よね、自殺じゃなかったら睡眠薬でも飲まされたんでしょう。」

「自殺」と「自殺じゃなかったら」という言葉がのしかかる。重い。空気まで重い物に変わってしまった。

「次にハルだけれど……恐らく薬物だわ。わりと強力なね。…苦しかったんでしょうね、辛そうだった。」

目を伏せて話す早苗。舞台に上がっている時と似ているけれど一つだけ決定的に違う事はココが「舞台上」ではなくて「リアルの世界」と言う事なのだ。

「…同じ日に二人が自殺はありえないと思うの。…言いたくはないけれどきっと…。」

そこで早苗は言葉を噤んだ。…言わなくても分かる、それなのに…

「殺されたんだろ。…だとしたら誰にだよっ!」

右京…無神経にもほどがあるだろう。何もこのタイミングで言わなくてもいいじゃないか…

「昨日誰かがはいってきた形跡はねぇ、そうなったら俺らの中の誰かだろ!?ありえねぇじゃねぇか、だって……ッ!?」

ピシャリ、と乾いた音が響く。そこには目を赤くして右京をにらみつけている花音がいた。

「…ってぇな、なにして「なにしてんのッて言われるのはそっちでしょ!?」

今まで見た事ない険しい顔で右京をにらむ花音。

怖い、と思った。凄く怖い顔してる。

「誰が殺したとか今はどうでもいいじゃん!今する事は私達の中の中から犯人を探す事じゃない…ッ!一刻も早く知らせて、二人を…休ませてあげて……考えるのはそれからでいいじゃんか……ッ」

そこまで一息に言ってから椅子に崩れ落ちた。肩も声も震えている。

そんな花音が痛々しくてどう声をかけていい物か迷った。

流石に右京も分かったようで、大人しく座って黙りこんでいる。

「…それじゃあ話を戻すわよ。この件は私達だけで解決はできない。…麓に降りましょう。その前に警察に連絡するのが先かしら。」

「…じゃ、じゃあ私連絡してくるから!ちょっと待ってて?」

重くなった雰囲気を払拭しようとするかのように明るく瑠璃はいって電話をかけに行った。
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