もう一度、あの夏にもどれるなら。
・・・莉子side・・・

しばらく…と言っても2,3分の事だろう青ざめた顔をして瑠璃が戻ってきた

「……ど、しよう。電話…線切れちゃってる。」

全身から血の気が引くのが分かる…そんなバカな事がある訳無いじゃないか。

ここは電波も届かない…そして、電話線が切れてしまっている。この事を意味するのは一つだけで…

「オ、オイ。ちょっと待てよ……俺達、帰れないって事じゃね?!」

私の気持ちを代弁するかのように右京が叫んだ。そうだ、電話が繋がらないと言う事は警察を呼べない…もちろんおじさんもだ。

「…落ち付きなさい。距離はあるけど歩いて降りれない事はないわ…時間がかかるけどね。」

早苗が言った。そうだ、なにも車でないと降りれないと言う事はない。

「政宗やハルには悪いけど…暫く待ってて貰いましょう。」

「……わりぃな。多分それはできそうにないわ。」

蓮が言う。なんで?私が問うと

「ちょっとテレビつけてみろよ。…できれば、気象関係取り扱ってる奴。」

男子は知っているのかな?うかない顔をしている。

「…な、によこれ。なんで……?!」

綾那が叫んだ。私も叫びたかったが声が出ない。

―――次のニュースです。昨日の豪雨により、一部地域土砂災害が起こりました。
      住民の方は十分気をつけ―――

そこでやっていたニュースはまぎれもなく私達の地域のもので、土砂災害が起きた所は私達が今居るコテージも入っているわけで…

ふいに、昨日瑠璃と話していた事を思い出した。

『まるで、おとぎ話みたいだね。綺麗だし、豪華だし……』

思わず、乾いた笑いが漏れてしまう。

これじゃまるでホントに『おとぎ話』じゃないか。孤立したコテージ、繋がらない電話、死んでしまった仲間、来ない助け!

小さな笑いはどんどんヒステリックになっていったのだろう。周りが心配そうに私を見ている。

「オイ、莉子?大丈夫か?」

日向が心配そうにこちらを覗きこんできた。軽く頬を叩かれる。

「…一旦お開きにしましょうか、今日はこのコテージから出ないでちょうだい。部屋にいるわ、考え事もしたいし。」

早苗がそう言って席を立った。綾那、瑠璃に支えられた花音、右京、蓮…皆順々に部屋にもどっていく。

…大分落ち着いたころには皆部屋に帰ってしまっていた。

傍にいてくれた日向にゴメン、と謝る。

「気にすんなって。それじゃ俺も部屋戻るから。…部屋まで送ろうか?」

…どうしようか、一瞬悩む。が、そこまで迷惑をかけていい物ではないだろう。

ううん、いいよ。すぐそこだし大丈夫。

そう答えて日向と別れた。とりあえず頭を整理したい…

階段を小走りで駆け上がり、自室へと急いだ。
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