溺愛†マドンナ
頭の上に置かれていた手が、ゆっくりと離れる。


私はクルリと背中を向けて教室に向かう秀悟の後をすぐに追いかける事は出来ずに、呆然と突っ立っていた。


「秀悟が……私を……」


小学校低学年という事は、少なくとも10年近くは想われていた事になる。


なのに私は何も気づかずにのん気に暮らしてて……それでも好きでいてくれたって事?


「集中なんて……出来るワケ無いじゃない………」


誰もいない廊下に、私の声が小さく流れる。


まだまだ問題は山積みだという事にも気づかぬまま、私はチャイムが鳴るまで動けなかったのだった。
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