溺愛†マドンナ
もう6月だというのに、背中がヒヤリと冷えた気がした。


「なっ……気に……入ったって…………」


本当は分かってる。


この男が誰を気に入ったと言っているのか、なんて。


と言うか一昨日の時点で見抜いていたのに、オレは何をこんなに狼狽(うろた)えているんだ?


まじまじと剣を凝視していると、剣が首を傾げた拍子に、銀色のクロスのピアスが揺れた。


「だから………オレ世那の事、気に入ったんだよね」


やっぱり……剣が気に入ったと言うのは、世那の事だった。


「ふざけんな………何だってアイツなんだよっ!?」
< 97 / 503 >

この作品をシェア

pagetop