銀狼と愛犬
林太郎は毎日神岳山に入り山頂の銀狼の祠を参拝していた。勿論…吉も一緒に山に入っていた。



この神岳山の銀狼伝説は代々神山家が語り継いで来ていたのだが、実際に銀の狼を見た者はいなかった為単なる伝説だと村人は思っていた。しかし、神山家の林太郎も唐吾も銀狼は必ず存在すると信じていたのだ。だから守り番としての今があるのだ。

ある日の事、吉と共に神岳山に入った林太郎は吉とはぐれてしまった。今まではぐれる事など一度も無かった為、林太郎は必死で吉を探したのだが吉と会う事が出来なかったのだ。「吉~!」
出来る限りの大声で叫んでみるも、空しくこだまが響くだけであった。
『仕方がない…一旦山を下るか?』
林太郎は陽も暮れて辺りに闇が訪れて来た為に吉が戻るのを家で待とうと思ったのだ。確かに吉は賢いし山にも何度も来ている…既に家に帰っているかもしれない。林太郎は吉を信じて山を下った。



家にたどり着いた時は、既に陽も落ち暗闇に覆われていた。
「親父…吉は戻っているか?…はぐれてしまったよ」

林太郎は落ち込み気味に唐吾に尋ねた。
「何と?…はぐれたんか!まだ帰って来てねえぞ…」

唐吾は心配そうに呟いた。

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