戦と死の神の忘れ形見


 ロスオイトの大結界は、水王の加護の厚い場所である。

 水王と氷王を混同するものも居るかもしれないが、あれらは別の王である。
 水王は水の王。氷王は、便宜上氷の王と呼ばれるが、冷気の王だ。

 液体だろうと水蒸気だろうと氷だろうと、水は水であり、冷気とは別である。

 そういうわけで水王の恵みを受けたこのロスオイトには水が溢れていた。
 統計では三日のうち二日は雨であり、熱気と共に微生物に適した条件となるために物の腐敗も早い。

 建物が石造りなのも木材等が腐るからであり、隙間から水が入り込まないようにしっかりと組まれていた。

 柔らかな身の厚い葉が生い茂り、花や果実も多い土地柄である。


◇◆◇◆◇


< 7 / 26 >

この作品をシェア

pagetop