揺れて恋は美しく
其の二
広いラウンジにて、無数の人達が思い思いに話しを弾ませている中、一人落ち込んでいる様子の美沙。
同席する玲美と由依が、心配そうに美沙を見詰めている。
「何処にもありませんの?」
「うん」
力無い美沙の返事。
「ちゃんと探した?」
「うん」
困り果てた様子の玲美と由依が顔を見合わせ、由依がパッと表情を変えて明るく話す。
「大丈夫だよ! 御守りなんか無くったって上手くいくよ!」
「そうですよ。リハーサルだって完璧でしたもの」
「違うの」
「え? 何が?」
「あの御守り、ママが私の為に作ってくれた、大切な物なの」
「ママって、あのお店の?」
「うん」
「そうかぁ…」
「じゃあさ。後で皆で探そうよ。ね?」
「ええ、そうしましょ。マコさん」
「うん。ありがと」
まだ浮かない顔の美沙に、玲美と由依が再び顔を見合わせた時、玲美が由依の向こうに視線を奪われ、由依がそれに気付き振り返る。
「何々!? 何の騒ぎ?」
元々騒がしかったラウンジではあったが、その騒がしさが何故か入り口の方一点に集中しており、ラウンジに居た女性の大半が集まるという異様な光景を生み出していた。
「ちっ、だから嫌だったんだよ…」
無数の女性に囲まれながらも、確実に歩みを進める桐島。
「こっち来るよ」
由依が美沙の肩を揺らして伝える。
「へ?」
美沙は顔を上げて、漸(ようや)くその異様な光景に気付く。
まるでスターの如く、黄色い声援を浴びながら歩く桐島。
近づいて来る桐島に気付き、驚いた様子で固まる美沙。由依は何故か緊急した面持ちで立ち上がり言う。
「桐島蒼太…」
「由依? 知ってるの?」
「何言ってるの! 桐島蒼太じゃん! うちの大学に居るとは聞いてたけど、まさか本当だったなんて…」
「有名な人?」
「現役の大学生にしてモデルの、非常に人気の有る方です。因みに、あの桐島グループの御曹司でもあります」
「御曹司!?」
やがて桐島が美沙の前まで来て立ち止まる。そして、思わずといった感じで美沙が立ち上がる。
「これ」
桐島が御守りを差し出す。
「あっ、私の御守り! そうか、拾ってくれてたんだ」
「ああ。落ちてたから」
「ありがとう」
「うん」
二人のやりとりを、由依は口に手を当てて驚愕の表情で見ていた。
「わざわざ届けてくれたんだ?」
照れ臭そうにポリポリと頭を掻く桐島であったが、いつの間にか静まり返っていた周りの女性達が今度はひそひそ話を始め、また徐々に騒ぎへと発展し出す。
再びざわめき出した周囲に、桐島は嫌悪感を露に周りを見渡すと、おもむろに美沙の手を取って走り出した。
「こい!」
「えっ!? また?」
呆気に取られる一同。
「何…? 何でマコちゃんと桐島君が??」
走り抜ける二人を邪魔出来ぬといった感じで自然と道が開け、二人は人混みを颯爽と駆け抜けてラウンジを出て行った。
あたふたする由依と、その場でただ一人、唯一冷静な面持ちの玲美。
同席する玲美と由依が、心配そうに美沙を見詰めている。
「何処にもありませんの?」
「うん」
力無い美沙の返事。
「ちゃんと探した?」
「うん」
困り果てた様子の玲美と由依が顔を見合わせ、由依がパッと表情を変えて明るく話す。
「大丈夫だよ! 御守りなんか無くったって上手くいくよ!」
「そうですよ。リハーサルだって完璧でしたもの」
「違うの」
「え? 何が?」
「あの御守り、ママが私の為に作ってくれた、大切な物なの」
「ママって、あのお店の?」
「うん」
「そうかぁ…」
「じゃあさ。後で皆で探そうよ。ね?」
「ええ、そうしましょ。マコさん」
「うん。ありがと」
まだ浮かない顔の美沙に、玲美と由依が再び顔を見合わせた時、玲美が由依の向こうに視線を奪われ、由依がそれに気付き振り返る。
「何々!? 何の騒ぎ?」
元々騒がしかったラウンジではあったが、その騒がしさが何故か入り口の方一点に集中しており、ラウンジに居た女性の大半が集まるという異様な光景を生み出していた。
「ちっ、だから嫌だったんだよ…」
無数の女性に囲まれながらも、確実に歩みを進める桐島。
「こっち来るよ」
由依が美沙の肩を揺らして伝える。
「へ?」
美沙は顔を上げて、漸(ようや)くその異様な光景に気付く。
まるでスターの如く、黄色い声援を浴びながら歩く桐島。
近づいて来る桐島に気付き、驚いた様子で固まる美沙。由依は何故か緊急した面持ちで立ち上がり言う。
「桐島蒼太…」
「由依? 知ってるの?」
「何言ってるの! 桐島蒼太じゃん! うちの大学に居るとは聞いてたけど、まさか本当だったなんて…」
「有名な人?」
「現役の大学生にしてモデルの、非常に人気の有る方です。因みに、あの桐島グループの御曹司でもあります」
「御曹司!?」
やがて桐島が美沙の前まで来て立ち止まる。そして、思わずといった感じで美沙が立ち上がる。
「これ」
桐島が御守りを差し出す。
「あっ、私の御守り! そうか、拾ってくれてたんだ」
「ああ。落ちてたから」
「ありがとう」
「うん」
二人のやりとりを、由依は口に手を当てて驚愕の表情で見ていた。
「わざわざ届けてくれたんだ?」
照れ臭そうにポリポリと頭を掻く桐島であったが、いつの間にか静まり返っていた周りの女性達が今度はひそひそ話を始め、また徐々に騒ぎへと発展し出す。
再びざわめき出した周囲に、桐島は嫌悪感を露に周りを見渡すと、おもむろに美沙の手を取って走り出した。
「こい!」
「えっ!? また?」
呆気に取られる一同。
「何…? 何でマコちゃんと桐島君が??」
走り抜ける二人を邪魔出来ぬといった感じで自然と道が開け、二人は人混みを颯爽と駆け抜けてラウンジを出て行った。
あたふたする由依と、その場でただ一人、唯一冷静な面持ちの玲美。