揺れて恋は美しく
廊下を駆けて行く美沙と桐島は、そのまま遂に外へと出てしまう。

「ちょっと、待って」

やがて周囲に人影がなくなり、桐島はスピードを緩めて歩く速度まで落とすが、尚も美沙の手を引いて道を行く。

「いい加減にして!」

堪らず手を振りほどく美沙。




丁度その頃。如何にも女性といった装いのママとレイコが美沙の通う大学へと到着し、物珍しくて見ているであろう赤の他人に対して、何か勘違いしているのか、手を振りながらキャンパスを練り歩いていた。

「憧れるわぁ」

ママが溢した言葉にレイコがすかさず。

「憧れるだけにしといてね」

と、つっこみを入れた所で、視界の奥に美沙と桐島の姿を見付ける。

「あれ、美沙ちゃんじゃない?」

「ママ!」

二人の表情が強張る。

「行くわよ! レイコちゃん!」

「おうよ!」

レイコはもはや完全な男である。




美沙と桐島の二人は、舗装された道から外れた人気の無い所に居た。

「何なんですか、急に?」

少し息も上がってるせいか、強めの口調で言う美沙。

「わるい。誰も居ない所で話したかったんだ」

「話し? 話って、何?」

桐島は一度大きく深呼吸してから、美沙を真っ直ぐな目で見詰めて言う。

「君が好きだ」

「…え?」

暫し沈黙の時が流れる。

「で、でも、私…」

「関係ない」

「えっ!? そ、それに私達、まだ会ったばかりだし。急にそんな事言われても」

「俺はずっと君が好きだった」

「へ…?」

既に真っ赤な美沙の頬。

「最初は自分でもどうかしてると思ったんだ。だけど」

「あのぅ、もしかして…」

「だけど! …ん?!」

「信じちゃってます?」

「何を?」

そこへ突然、レイコのヒップアタックが桐島に炸裂する。

「どぅえい!!」

「ぐわぁー!」

吹き飛ばされる桐島。

「レイコさん!!」

「私が来たからにはもう安心よ」

「大丈夫だった美沙ちゃん?」

「ママ!! 来てくれたんだ!」

「勿論よ! あなたのピンチにじっとなんてしてられるもんですか!」

「ピンチ??」

吹き飛ばされた桐島が動かない。

「ああぁ!! 桐島君!?」

やっと桐島に気付いて駆け寄る美沙は、心配そうに桐島の名前を呼びながら身体を揺らし、意識がある事を確認すると安堵の表情を浮かべて、桐島の頭をそっと浮かして膝枕をした。
桐島を介抱する美沙の姿を目の当たりにし、おねぇ二人はハンパないやっちゃった感を漂わせていた。
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