揺れて恋は美しく

某ラーメン屋にて。
カウンター席しかない狭く小さな店内にレイコとルカの姿があった。
華奢な身体のルカだが、大量の麺を一掴みに口へと運び、豪快に頬張っている。

「旨い！ 旨いぞレイコ！」

「知ってるわよ」

「こんなクソ狭い店、よく見つけたな？」

「聞こえてるわよ」

目と鼻の先でスキンヘッドの店主が、明らかに不機嫌そうな顔でルカを睨んでいる。

「オヤジ！ めちゃくちゃ旨かったぞ！ ありがとな！」

「お、おう」

スープまで飲み干したルカに次いでレイコも食べ終わり、カウンターにお金を置いて席を立つ。

「こんな豪快なねぇちゃんは初めてだぜ。ラーメン好きか？」

「当たり前だ！ 中でもオヤジのラーメンが一番だぜ！」

オヤジとルカはがっちり腕を絡ませて、キメ顔でお互いを見合い頷く。

「どこの劇団よ…」

呆れるレイコを無視して、ルカは気分爽快に店を出ていく。
店から出た二人は次の行き先について話す。

「どうする？ 帰る？」

「折角だから飲みに行かないか？」

「今から？」

「今から」

「店どうすんのよ？」

「勿論出るよ」

「…どんなけタフなのよ」

レイコは深呼吸するように深く溜め息をついて、覚悟を決めたように表情を変えてルカに付いていく。
意図せず人の目をひくレイコとルカの組み合わせ。由依と玲美もその中の二人だ。

「あれ、レイコさんじゃない？」

「ルカさんも一緒のようですね」

「ホントだ」

由依と玲美がレイコ達の元へやってくる。

「こんにちはー！」

「あら、あんた達。偶然ね？」

ルカが何やら不適な笑みを浮かべているが、由依とレイコはそれに気付かず話し込んでいて、玲美だけがそれに気付き怯えていた。

「ル、ルカさん…？」

「お前ら暇そうだな？」

「へっ！？」

「行くぞ！」

そう言ってルカは行ってしまい、由依達は仕方なくといった感じで後を付いていく。

「これ…。パワハラだよね」

複雑なレイコの心情は察するが、もう誰にもルカは止められない。