揺れて恋は美しく
改めて友達からスタートする事になった二人を、瀬野は勿論、真希も祝福していた。

「諦めたのかい?」

「まさか。友達てゆうなら、私にもまだチャンスはあるでしょ?」

「ハハ。成る程ね」

そして更に、桐島と美沙が座っている席の窓の外では、見つからぬように窓の下に隠れて号泣しているレイコ達が居た。

「偉いぞ美沙」

「あの坊やも、見直したわ」

「マコちん。良かったね」

「あのぅ。中に行きませんか?」

人目を気にした冷静な玲美は店に入る事を促し、一同は店の中へと入って行った。
まだ涙の乾かぬ美沙はレイコ達の姿を見て驚き立ち上がり、そんな美沙に由依が先陣を切って飛び込み、それにレイコ達も続いた。
瀬野と真希は突然の事に少し驚いていたかも知れないが、共に喜び共に涙し祝福するその様子に、自然と顔がほころんでいく。
それほど大きくない店に皆が集まり、席を埋め尽くさんとするその光景に、マスターは一人慌ただしく動いていた。

「手伝いましょうか?」

見兼ねた真希が言葉を掛ける。

「よし。僕も手伝おう」

瀬野は腕を捲り、真希と一緒にカウンターの向こうへ廻った。マスターは一人別の意味で涙した。

「オーナー…」

「えっ!? あんたここのオーナーだったの?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「言ってないわよ」

「まぁいいじゃん? 今はとにかく、祝ってやろうよ」

「なんで私が…」

とは言うものの、髪を束ねた真希は手際よく料理を手伝い、その働きにマスターも満足そうに指示を出し作業をこなす。

「はいこれ!」

出来た料理を運ぶ瀬野。そこで初めてレイコとルカが瀬野に気付き、桐島も交えて会話をし、そしてまた料理を取りに戻っていく。
楽しく騒ぐ一同の元に大方の料理が運ばれてくると、瀬野と真希もカウンター席に戻り、皆で改めて乾杯をして料理を楽しみ盛り上がった。
そしてあっという間に日が暮れ、ささやかな祝福のもと、その小さなパーティーも終わりを迎えた。

「私ほんと、何しにきたんだっけ…?」

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