揺れて恋は美しく
バイキングスタイルの食堂で昼食を楽しむ、美沙と由依も玲美の三人。
由依が不満顔で美沙に尋ねる。

「今日も桐島蒼太とデートかい?」

「ごめん!」

両手を合わせて謝る美沙であったが、由依の表情は変わる事なく不信感を露に抗議する。

「ライブまで時間ないんだよ?」

「分かってる。明日は出るから」

「本当に?」

「あのぅ。私も今日は…」

「ええーっ!」

玲美が恐る恐る口を開きそう言うと、由依は一瞬驚くものの直ぐに上体が崩れ落ち、不貞腐れたようにぶつぶつと呟き項垂れる。

「どうせ私だけだよ、真剣なのは。皆仕方なく付き合ってくれてるだけなんだ。そうだよ。マコちゃんは恋愛中だし、玲美は元々クラシックだし、ルカさんだってレイコさんを見返したかっただけだし」

「ゆ、由依?」

「皆いいよねぇ。私には歌しかないから、今度のライブイベントは絶対成功させなきゃいけないのに、まともに練習も出来ないなんて…。きっと練習不足でライブも失敗して、私一人だけが取り残されて、夢も希望も無い惨めな人生を歩んで行くんだ。どこまでも…」

「なんか聞いた事あるような…」

「もういいよ! 行け! 皆の夢叶えるために!」

「何の事??」

やけくそのようにいい放つ由依に、訳が分からないといった表情の美沙と、冷静な面持ちで丁寧に答えを返す玲美。

「お言葉に甘えて、今日は練習を休ませて頂きます」

「はいはい。いいよいいよ。好きにしてちょうだい」
< 45 / 45 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop