ミッドナイトインバースデイ
ミニスカ魔女の紗奈にシャンパンを手渡される。
「改めまして、紫織先輩!お誕生日おめでとうございます~!いつも、大変お世話になってありがとうございます。今年一年が、紫織先輩にとって素敵な365日になりますよーに」
きらっと、語尾を輝かせて、右手に持っていた手作りの星つきステッキをくるくるとまわしてみせた。
「「「かんぱーい!」」」
高らかに上げられた祝福の声が、驚きのせいで数分遅れでじわりと心臓に染みた。
「あ、ありがとう…驚いたわ、紗奈」
「ふふ、サプライズ大成功ですね。さあさあ、今日は飲んで食べて、先輩の生誕を心からお祝いしましょ」
くいくいとシャンパンを飲む紗奈は、目元をほんのり染めながら微笑んだ。改めてくるりと辺りを見渡せば、ハロウィンを意識した内装はこの洋館の雰囲気にぴったりとはまっていて、なかなか本格的だ。主催者であろう彼女だって忙しかったはずなのに、いつの間にこんな準備をしていたのだろうか。
「先輩の誕生日、ハロウィンと近いですし、こういうのも楽しいかなって提案したら、皆ノリノリだったんですよ。どうせ、先輩のことだから、じぶんの誕生日だって忘れていたでしょ」
「そ、そんなことないわよ!」
「どうかな~。だって、先輩、いま彼氏もいないもんね…」
「忙しくて、そんな暇ないだけです」
ぐっさりと痛いところをぶっ刺してくる25歳にぴくりと眉をあげるも、ここまでしてくれたのだ。沸き上がる何かをぐっと飲み込む。
「うそー。まだ、彰さんのこと忘れられないとか?」
「ちょっと、紗奈!またそうやって、人の恋愛に口出しして。そんなことより、紫織、誕生日おめでとうね」
「ありがとう、美緒。仮装、可愛いね」