ミッドナイトインバースデイ

 言えば、鬱陶しく感じた彰が離れるかと思ったのに、意外にも、彼はそうしなかった。それどころか、当時あった女性関係を片っ端から整理して紫織に交際を申し込んできたのだ。

 それから、一緒に暮らし始めて気づけば三年だ。
 最初の半年くらいは、まあ、それなりに幸せだったのだと思う。多分。それからは、ちらつく女の影に見ない振りで、喧嘩をしては別れ、別れてはよりを戻してまた喧嘩、その繰り返しだった。

 美緒を巻き込んで、終わりまでの三ヶ月は特に酷かったと思う。

「浮気する彰も、それを非難する自分も、ずっと嫌だった。いらいらして嫉妬して、我慢するのも疲れた。気持ちも沈むし、あんな気分を味わうのは二度とごめんよ」
「…だよね。そういうの、もう勘弁って感じよね」

 遠くで、他の同僚からシャンパンを受けとりながら笑う美緒が見えた。

「可愛い後輩ね。今日の為に、あの子結構頑張ってたのよ」
「うん。入社してきた時は、やばい、ゆとり世代きたって思ってたけど。最近、先生方からの評判も良くて。勢いがいいってさ」
「羨ましいわ、勢いかあ。誕生日迎えたあんたに言うのもなんだけど、29歳って、本当微妙な年よね。紗奈くらいの年のときには、恋愛も仕事もバリバリしてる先輩みて憧れてたけどさ。実際なってみれば、あんまり変わらないの。周りだけが、妙な期待や変化ばかり求めてくるようになるだけ」
「そうかな。私には、美緒は昔も今も輝いて見えるよ」

 にこりと笑ってそう言えば、シャンパン一杯で酔っぱらう酒の弱い美緒に思い切りハグをされた。

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