キミの翼が羽ばたく時。
「この部屋、気兼ねなしに使っていいから!今日からここは雫の部屋!」
翼がニコッと笑う。
「自分の部屋……」
今まで無かった自分の居場所がみつかった気がして‥。だからかな。不意に瞳から涙がこぼれた。
「雫……?」

…私はお父さんが死んだ時、泣かなかった。
決して無理をしていたわけじゃない。
ただ生んでくれた親なだけで、それ意外の関係はなかった。
でも私にとって、それ以上の関係だったんだ。

胸が痛かった。
その時、瞳から涙はこぼれていないのに、心が泣いていた。
お父さんの記憶なんて、ほとんどない。
幼稚園の時に別れたっきりだったから。

でも、どこか暖かい大切な思い出だった。
だから心が痛んだんだ。
今私の家族は、翼だけ。

でも翼は私に居場所をくれた。

普通と言えば普通だ。
家族が同居するだけだ。
中学生でお金も何もないない私を、保護してくれているだけだ。
自分でも変だと思うけど、やっぱり居場所がほしかったんだ。
< 6 / 70 >

この作品をシェア

pagetop