色を持たない姫君
『…っ……ぁ…ぅ…っ…ぃ…!』
少女は生まれて5年。
言葉をしゃべったことも聞いたこともない。
ただ本を与えられただけ。
少年は口を開いた。
『僕は暁 くろす。あなたの付き人です。』
『私……っの、付き…っ人…か?』
まだ言葉の発し方がままならない少女は必死に声をだす。
『私は…っ、いろは。上のっ…名は、知らなっぃ…。』
『ここは露吹(アラブキ)家でございます。故に、あなたは露吹いろは様…でよろしいですか?』
『多分っ…なっ…」
暁はまず、いろはに言葉を教えた。
しかし、いろはは本で意味を理解していた。