色を持たない姫君


『…っ……ぁ…ぅ…っ…ぃ…!』


少女は生まれて5年。
言葉をしゃべったことも聞いたこともない。
ただ本を与えられただけ。


少年は口を開いた。


『僕は暁 くろす。あなたの付き人です。』

『私……っの、付き…っ人…か?』


まだ言葉の発し方がままならない少女は必死に声をだす。


『私は…っ、いろは。上のっ…名は、知らなっぃ…。』

『ここは露吹(アラブキ)家でございます。故に、あなたは露吹いろは様…でよろしいですか?』

『多分っ…なっ…」



暁はまず、いろはに言葉を教えた。

しかし、いろはは本で意味を理解していた。
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop