レイプ
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おじさんに道教えてくれる?
十一歳になった雨の日。
高野澪(たかのみお)は、車道に止めた黒い乗用車の助手席から出てきた男に苦笑を向けられた。
「やだねぇ、せっかくの学校帰りに雨なんてさ」
澪に笑いかけた顔は、まるで世間話をするような口調だったので、澪は傘の柄を握りしめて頷く。
「こんだけ降ると、靴下まで濡れちゃったんじゃない? 呼び止めちゃってごめんな」
澪は男が腰を折って謝るのを見つめながら首を横に振った。
「靴下濡れてない。あたし、長靴履いてるから」
「そっか、偉いな。最近は台風も多いし、雨具はちゃんと用意しておくべきだよな。おじさんたちも見習わないと」
澪はその言葉に軽く首を捻った。
「おじさん、ひとりじゃないの?」
「ああ、運転席にひとり座ってるからな。街路樹を挟んでちゃあよく見えないか」
「うん」
澪は頷いて、立ち去ろうとした。雨音も強くなってきてるし、車道と歩道の間に植えられた銀杏の木が邪魔で、話していても距離を感じる。
そう言えば、お母さんも知らない人と話しちゃいけませんて言ってた。
思い出すと、傘の滴で鞄が濡れないように気をつけながら目を落とす。
「話し込んじゃって悪かったね、冷えちゃったかな?」
澪は男と目を合わさずに首を横に振る。
「平気」
「じゃあ、最後に教えてくれるかな? 最寄りの駅に行きたいんだけど」
澪は顔をあげた。
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