初恋*
トイレの鏡で前髪を直すのは、もう習慣で。
今日もトイレの鏡を見て前髪をちょいちょいっと直す。
鏡に映る沙希の顔が真っ赤だったから、
あたしは沙希の顔を見られないでいた。
「ハナコ、あのね。昨日、奏多から電話来て…」
「電話?ケータイも持ってないアイツが?」
「うん。なんか…話してて…その、告白、されて…」
クラっと目眩がする。
協力してくれなんて乙女チックなこと言っておいて、もう告白!?
展開、早すぎだよ。…奏多。
「…そ、そう」
「でも、さ。ハナコ、奏多のこと好きじゃん?あたし、どうしたらイイか分からなくて…」
「断ってはいないって、ことね?」
うん。と、頷く沙希に、
裏切られたような気分になって、あんなに仲良しの沙希に憎悪が増す。
だって、沙希が奏多のこと好きなんて聞いたことないし。
そもそも、あたしが好きなこと知ってんじゃん?
なのに…なんで?
なんで返事保留にしたりしてんのよ。