初恋*
グッと握り締めた手を開くと
手のひらには爪の痕が残っていた。
「…うん。言ってくる!ありがとう!」
「ハナコ!思いっきり振られておいで!
夕方からカラオケ!行くよー!」
思いっきり、振られておいでって。
何それ。笑える。
笑えて、すごく勇気を貰える。
「うん!思いっきり振られてきてやるわ!」
バタバタと走る廊下。
走ることなんてそんなになかった廊下。
こんなに長いなんて知らなかった。
校門をくぐって駆け抜ける。
右へ左へ角を曲がると、公園が見える。
絶対、そこにいると思ってた。
毎日のように奏多と沙希は、離れるのを名残惜しそうにそこのベンチで話しているから。
そして、その公園は
あたしと奏多が小学生の頃によく遊んだ場所。
振られるには、もってこいの場所じゃないの。