魚、アクション
「見えますとも。
綺麗な月が上がっていますよ。
さっき水面に顔を出して
見てきましたから。」

「そうか。」

「ええ、
それはそれはまあるくて
金色に輝く美しい月でした。
恐らく満月ではないかとーー」

魚は必死に答えた。
魚は焦っていた。

何故ならこの目の見えぬ
年老いた魚の方が
自分より遥かに美しい月を
見ている気がしたからだ。

「見えるならいいじゃないか。」

年老いた魚はそれきり
何も言うことはなかった。

魚は美しい月の下、
がっかりした気持ちで
あてもなく泳いだ。
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