俺は甘ツン野郎

綾女が格好つけるように エプロンをつける。

若妻にでもなったみたいにルンルンなのがよくわかる。

女は単純だな…
お袋の花柄エプロンなんかしてさ。

「 しゃーねぇ 手伝ってやる 」

「 え~ 出来るの?」

「 お前よりはな 」

俺はパックに入ったサラダを両手に持ち、皿にひっくり返した。

「 ああっ!やだぁ憂里~ お皿の大きさとか考えてよ~ たくさんこぼれてるしっ 」

「 だぁーうっさい!食えるからいいだろうがっ!」

手伝ってやってんのに!!

俺は赤いパプリカを手に取り、綾女の口元に差し出した。

「 綾女… あーん、してみ?」

クッと顎を持ち上げてやると、綾女がみるみるパプリカのように赤くなった。

おもしれぇ。これは使える…

じっと綾女の目を見て反らさずいると、照れのあまり視線が宙を舞う綾女がパクッとパプリカを食べた。

その時一緒に俺も端をパクッとかじった。

近すぎる絡む視線に 綾女のあの心臓のドキドキを思い出す。

きっと今は同じようにドキドキしてるにちがいない。

「 パプリカうまい?食えるだろ?」

「 う…ん… 」

こんなふうに手のひらの上に乗っかる綾女は可愛くてたまらないが、半分楽しんでいるんだ。

こんな可愛い奴いじめないでいられるほど俺の懐は大きくないが、綾女を思う懐は大きすぎるってもんだ。
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