僕だけの窓口女子
思わず気持ちが高ぶるが一瞬で萎える。


窓から顔を出したのは四十歳ぐらいの中年女性。初めて見る顔だが、千歳の母親なのだろう。

婦人は僕の姿を見て、目を細めた。


「あなたね。千歳の話し相手になっているっていうのは」


とても穏やかな声で話す。妙に緊張してきて、唾をゴクッと飲み込む。


「は、はい・・・。あの、千歳さんは」


すると、口角を少し上げた。
背筋にゾクッと悪寒が走る。


今更気づいた。


婦人が身に纏っているのは黒い着物であることに。


「いつも、千歳の話し相手になってくれてありがとうね」


にっこりと微笑むその表情は、あまりに千歳に似すぎていた。
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