仮面夫婦

「咲はどんなときもあなたの愛情を求めています。ただ一緒にいたいっていう一心で、無我夢中で自分を痛め付けるようにあなたのもとで働いてるんです。あなたのためならなんでもしてきたはずです。あなたに愛されたいが為に自分の気持ちなんて考えず、あなたのことだけを考えています。」




咲のお義父さんはため息をついた




そんなの気にせずに続ける




「咲は今まであなたにわがままを言ったことがありますか？咲はあなたになにかお願いをしたことがありますか？あなたは咲を抱き締めたり、誕生日を祝ったり、頭を撫でたりしたことありますか？」





ばつが悪いようにお義父さんはうつむく




「今咲は自分を痛め付けながら生きてます。やっと本当の家族とか愛情を手にしかけたのに、失って苦しんでます。自分のせいだって、、、自分を責めて泣いてます。それでもあなたにわがままは言わない。言えないんだ。苦しいとか辛いとか悲しいとか、あなたには言えないんだ。嫌われたくないから。愛されてないから捨てられるんじゃないかって不安だから。咲はあなただけじゃなく、誰にも言えないんです。」




「、、、？」




「家族を知らないから。なにがあっても壊れない家族の愛情とか繋がりが分からないから。ずっとずっとふあんの中で生きてきたから。俺と結婚してからも、わがままを言ったりお願い事をしたりしません。できないんだ。そんなことしたらひとりになるんじゃないか、捨てられるんじゃないかって不安だから。」