旅人の詩
「そうだなぁ、移住を希望する者もけっこう多いけれど、なかなか叶わないものでねぇ」
「国は移民をあまり受け入れないのかい?」
サラリスがそう聞くと、宿屋の主人は苦笑しながら静かに首を横にふった。
「そう言うわけじゃないんだが、うーん、なんて言うか……旅をする人には、ここはいちゃいけん場所なんだよ。きっと後悔することになるからね」
「え?」
「まぁ、悪いことは言わんから、定住は考えないことさ」
そう言って、宿屋の主人は静かに目を伏せたのだった。