旅人の詩

「甘い香りの国の民」







サラリスが春の国に滞在して一週間がたつと言う頃、もう常連客と化した彼はいつものように店で梅酒をチビチビやっていた。






しかし今日はいつもと違い、店主が先ほどから神妙な面持ちでこちらを見てくるのだ。





「なあサラリスさん、あんたはいつ頃までこの国に滞在する予定なんだい?」





その質問に、サラリスも小さく考え込みながら答えた。





「実はもうそろそろ発つ予定なんだ。ずっと宿屋に居すわるのは、流石に高くつくしな」





「そ、そうか…。うん、そうかそうか」





サラリスのはなしを聞いた店主は、嬉しそうな、残念そうな、よく分からない表情を浮かべながらうんうんと頷いている。




サラリスは小首を傾げながら店主に問うてみたが、やはり曖昧に笑うばかりなのだった。




店を出たサラリスは、暖かな木漏れ日の射す小さな小さな公園に足を向け、心地よい木陰に座り込んだ。




「ふぅ…」



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