旅人の詩
「旅人サラリス」
「ピピッ」
自分の股ぐらから、騎乗用の巨鳥が高い声でピピピとやかましく鳴いた。
手綱を一つピシャリとやると、不満そうにまたピピピピと鳴き、グンと高度を下げて抵抗してくる。
高い空の上でそんなことをされたら、上に乗ってるこっちの身が危ないじゃないか。
「ちちぃっ、相変わらず性格が悪すぎるぜ。お前が処分寸前でピンチのところを、俺がタイミング良く買ってやった事を忘れたのか?ええおい?」
「ピピーーーッ!」
「うぅわっ、危ねっ!おい鳥公!」
「ピーッ!」
上空で喧しく言い合いをしている騎乗用の巨大な鳥と、その背に跨がる旅人。
空は爽やかに晴れ渡り、二人を包む空気が微かに甘く感じる。
その甘くあたたかな空気を感じとり、二人はピタリと喧嘩を止めて高度を徐々に下げて行く。
「おい、クソ相棒。やっと美味い飯にありつけるんじゃねぇか?治安も良さそうだ」
男はそう言うと、花舞う春の国に降り立ったのだった。