旅人の詩




老人はそう言うと、薄い上着の袖をめくり上げて見せた。




あらわになったよぼよぼの腕には、茶色く細い何かが垂れ下がっているように見える。




「これが何かわかるかね?」





「いや……」





「ふむ、まあそうだろうね。……この国の人々はね、みな春の国の国民の下働きとして生きているのさ」





「春の国の国民?下働きとして?あの、言ってることがよく分からないんだが。あんたはここの国民じゃないのか?」





「いいや、ただの下働きさ。わしらは皆、正式にはここの国民ではないんだよ。宿屋の主人にしろ、露店のおやじにしろ、ワシみたいなしわくちゃなお爺さんにしろね」








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