旅人の詩
「でもお兄ちゃんはくしゃみしたろう?まだ体がここの空気を拒絶しているんだよ。ここの空気に何も感じなくなったら、もう手遅れなんだよ」
「そんな……。じゃああんたは?」
「ここで生まれ育ったんだ。国から出ることすら出来ないねぇ」
「……で、でも、何でそんな事になってんだ?」
「何故って、ここは春の国だからねぇ。別名花の国とも言う。ここの国民は人間じゃない。花がここではわしらより上にあるのさ」
「花?」
「そうさぁ。花がここの国民であって、わしらはその世話をするためにあるんだ。もちろん世話を止めれば花達は枯れる。花粉も無くなる。空気は清浄なものになる。そうなると……」
「……ここの人達は、生きて行けなくなる?」
「その通り。花達は下働きを逃がさない工作もしてあるのさ。もう、何百年も続く関係なんだ」