旅人の詩
「植物が……植物が人間を、支配する?そんな事……」
「そうだなぁ、他所の人からしたら、異常以外の何でもないのだろう。しかしわしらはね、段々、段々と思考が人からかけ離れて行くんだ。思考だけじゃない。その体も人からかけ離れて行くんだ。だからかな、それほど不可解には感じなくなってしまう」
老人はサラリスに近付いて、ふたたび自分の腕をさらして見せた。
よぼよぼの腕には茶色く細い紐のような物、良く見てみれば、小さな蕾もくっついている。
「こ、これは……蔓?」
「ああそうだ。わしらはね、歳を重ねるにつれ、その体は植物に近くなって行くのさ。わしくらいになると、日の光だけでもある程度生きてける」
老人はそう言い、にこりと笑う。
その顔によった皺は、もう樹木の年輪にさえ見えた。