旅人の詩





人懐こそうなその顔をチラリと見、サラリスは控え目に声を出した。





「この国は、本当に過ごしやすかったよ。皆優しかったし、料理だってうまいしさ」





しかし、もうここにはいられない。





そんな優しい人々が、ここには長居しない方がいいと言い続けていた意味が分かってしまった今は……





「うんうん、そう言ってもらえて嬉しいな。旅行なんて行けない身の者ばかりだから、こっちも旅の方の聞かせてくれる外のはなしをいつも楽しみにしているんだ。」





「そう、か……。俺みたいな奴のはなしで喜んでもらえたのなら、来た甲斐もあったかな」





「もちろんさ。じゃあサラリスさん、気を付けて旅の続きを行ってらっしゃい」





「ああ、色々ありがとう」





差し出された樹皮の感触がする手のひらを、サラリスもしっかり握り返したのだった。













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