旅人の詩
サラリスも先程の患者と同じく、頬に手をあてとぼとぼと待合室へ戻り、椅子に腰かけると、こわごわ舌で口の中を探ってみる。
しかし、とくに治療跡がある感じがしない。
だが、先程のチクリとする痛みが薄まっているような気もする。
「サラリスさぁ~ん」
「あ、はい」
受付嬢の声に促され、カウンターへ近付くと、小さな小瓶に入った薬を差し出された。
「サラリスさんは、軽度の虫歯ですねぇ。ここで治療する程でもないのでぇ、治療魔法薬をお出ししておきますねぇ」
「そ、そりゃどうも」
「あ、軽度とは言っても虫歯は虫歯。甘いものはしばらく控えてくださいねぇ」