DUNK!

「御山くん、これ、千華の彼氏が私にくれるって言うから、はい」

「え、借りて良いの?」

「ううん、あげる。…本当は読みたかった訳じゃなくて…」

言わなきゃ、言うのは今だ。千華もきっと気を使って、背中を押してくれてる。言わなきゃ、私の気持ち。

「…ただ、御山くんがバスケしてるから、御山くんがっ、…す、んっ」

ドンッ、と下駄箱に背中が当たる。暗くなった視界に目一杯写っているのは私の好きなイケメンくんで。柔らかい感触が触れ、離れていった。

「好きだ。小谷さんが、すきだ」

――!?

もう言葉は出てこないし、口はパクパクしてるし、真っ赤な顔で今私きっと金魚だ。
じゃなくてっ

「…う、そ」

「ホント。…最初は他の女子と違ってキャーキャー言ってこないのに、練習試合とか見に来てて気になって」

瞬きさえ忘れ、彼の顔を見つめる。

「放課後の自主練の時に、渡り廊下で見かけて、そん時の笑顔が忘れられなかった」

少し照れ臭そうな顔。初めて見る表情。

「それ…きっと、御山くんを見てたからだよ」

バレてたのは恥ずかしいけど、じわじわ嬉しさが込み上げてきた。

「俺と付き合ってくださいっ!」

「はいっ」

前日のように二つ返事で答えた。断る理由なんて微塵もない!

ギュッと抱き締められて、すっぽり包まれて、涙が溢れてきた。
体育館と渡り廊下の距離のように、それ以上近づけないと思っていたのに。今、その距離が0になるなんて!
私と彼の間に挟まれて苦しそうな本には悪いけど、もう少し、このままで…。

「ダンク決まった時みたいに最高の気分だ!」

その言葉に、泣き笑いした。




その後、直斗さんの車の中で根掘り葉堀り聞かれたのは言うまでもない。




END


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