DUNK!
「…に、こ…にっ、小谷っ!小谷千代っ!」
「はっ!?はいっ!!」
考えるより体が先に動いて、勢い良く立つと、私を呼んだ先生の方が驚いていた。
「…あ、いや、お前が授業中に寝るなんて珍しいな…大丈夫か?」
「…あ。…すいません大丈夫ですすいません…」
教室中がドッと笑いに包まれて、恥ずかしさにうつ向いく。きっと御山くんにも笑われた。
先生の言葉は殆ど耳に入ってこなくて、うつ向いたまま座った。
ホームルームが終わると親友の千華が私のところへと駆け寄ってきた。彼女とは小学生の時からの親友。
「さっきの6限目、居眠りなんて…真面目な千代ちゃんにしてはおかしいですねー。昨夜は何かあったのかしら~?」
目をキラキラさせちゃって、からかって楽しむ気満々だ。
だからって彼女が喜びそうな話はないので素直に答える。
「何も無いですよー。読書に夢中になって夜更かししちゃっただけですー」
「なぁんだ…彼氏とのメールに夢中とかじゃないのかぁ」
「千華…私に彼氏いないの知ってるでしょ」
そう言えばそうね~。なんて笑っているけど、彼女は私の好きな人も知っている。知っててからかってくるのだからタチが悪いと思う。
凄く良い子なんだけどね。
「あ、千代、これ、読みたがってた本」
「えっ!」
「あの人、千代になら貸しても良いって。返すのもいつでも良いって」
アタシには貸してくれないのに、と口を尖らせる彼女が言うあの人とは、千華の年上の彼氏だ。…親友が恋のライバルにならなくて良かったと心底思った。
「有難うっ!」
「いえいえ。じゃ、アタシはバイトだから」
笑顔で手を振り、走って帰る千華を見送る。
借りた本を鞄に入れた時だった。
「小谷さんっ」
「!?」
突然声をかけてきたのは、憧れの御山くんだった。
突然過ぎて、長身の彼を見上げたまま固まってしまった私をさして気にすることもなく、眩しすぎる笑顔で彼は言った。
「小谷さんって図書委員だよね?今日も図書室にいる?」
コクコク、と壊れたロボットのように首を縦に振ることしか出来ない。
「じゃあ今日部活終わったら行くから待ってて?」
コクコク、と再びロボットのような動きで答える。
「良かった!じゃあまた後でっ」
そう言い残して優しい笑顔をプレゼントしてくれた彼はあっという間に部活へと向かって行った。