DUNK!


陽が伸びたとは言え、外はもうだいぶ暗くなっていた。3年生にとっては最後になるであろう大会を目前に頑張る運動部も、校内に残っているのはバスケ部と野球部くらいのようだ。

かく言う私も3年生で、部活には所属していないから、今から受験勉強に力を入れている。

「小谷先輩、大丈夫ですか…?」

「へ?」

「…今日ずっとぼんやりしてたんで」

同じ図書委員の後輩に心配されてしまった。
カウンターの中、後輩と委員会の仕事をしていたのだけれど、もう図書室を閉める時間になったらしい。そう言えば、いつの間にか私たち以外いなくなっている。

「有難う、大丈夫。先に帰って良いよ。戸締まりしとくから」

「はい。お疲れさまでしたっ」

ペコリと頭を下げて帰っていく彼女は委員会の中でも一番真面目な後輩だ。今日も図書の貸し出しカードをしっかり整頓してくれてある。
何だか先輩として申し訳なく思った。

でも、今日はぼんやりしてしまっても仕方ないと思う。
だって、御山くんが、来るって!
そのことで頭が一杯で、委員長としての仕事も勉強もまったく手に着かなかった。

いつ来るのか、本当に来るのか、不安がない訳じゃないけど、人知れず努力してる彼が嘘つくような人じゃないことは解ってるつもりだ。

「待ってる間に窓の鍵閉めとこ…」

カウンターから出て近くの窓から確認して行く。
背の低い私は手前にある本棚に邪魔されて、鍵に手が届かない。仕方なく、本を汚さぬように本棚に上って鍵をかける。
そのまま本棚を歩いて次の鍵をかける。

「小谷さんいるっ?」

慌てて振り向くと御山くんがこちらに駆け寄ってくるところで、心拍数が急上昇した。

「あっ、待ってっすぐ下りるか、らっ!?」

「! 小谷さんっ!」

急いで下りようとして足を滑らせてしまった。

ぎゅっと目を瞑る。硬くて痛いだろう衝撃を覚悟していたのに、私の体はどこも痛くならなかった。それどころか、温かい何かに包まれて…。

「…っ!?」

「あービックリした…。小谷さん、大丈夫?」

あ、大丈夫って聞かれるの今日何回目だろ…。

…じゃない!何これっ私今、御山くんに抱き締められてるっ!

「あっだ…!ダイジョブですっ!」

あまりの事態にパニックになって彼から勢い良く離れる。
どうやら、私が床にぶつかる前にダッシュして来て抱き止めてくれたらしい。

もうっ恥ずかしくて顔から火が出そうっ!

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