DUNK!
「あっありがと…」
上擦る声でお礼を言うと、優しい笑顔で、怪我しなくて良かった、なんて言ってくれて。
ドキドキはいっそう激しくなった。
顔を見ていられなくて、思わず窓の方を向く。
「あ…鍵閉めなきゃ」
戸締まりの途中だった。
「俺がやろうか?届くし」
「でも…」
「気にしなくて良いって。待たせちゃったお詫びだからさ」
そうゆう気配りが出来るところも、モテる理由なんだろうなぁ。うん、惚れ直しちゃった。
「…有難う」
今度は笑顔でお礼を言えた。
彼のおかげで戸締まりも早く終わった。でも、もう図書室の鍵を職員室に返さなければいけない。それを彼に伝えると、じゃあ帰りながら話そうということになった。
どうやら図書室に用があった訳じゃないらしい。尚更、私に声をかけた理由が解らない。
先生さえも疎らになった職員室に鍵を返す。余計に、今二人きりなのだと意識してしまう。
「なんか…時間取らせてごめんな?」
「ううんっ気にしないでっ!…で、どうしたの?」
暗くなった廊下や階段を通って下駄箱へ向かう。
ドキドキは止まらないけど、少し落ち着いたかも。何よりも御山くんは話しやすい。
「…園田さんに本、借りてたろ?あれ、俺も探しててさ」
鞄から本を取り出す。
それは亡くなったある有名なプロバスケット選手の人生を書いたものだった。
もし、御山くんと話す機会が出来たら話題に困らないようにと、小さな希望のために借りたのだ。
「…先に読む?持ち主に言えばオッケーしてくれると思うよ?」
「え、悪いよ!それに…その持ち主って男?」
「うん。ほら、時々野球部見に来てるOBの人」
「ああ…あのやたらイケメンな」
…ぷっ。
思わず笑ってしまった。
御山くんいわくやたらイケメンな野球部OBは、私もよく知っている人だけど。
イケメンがイケメンって言うと、なんかおもしろい。
口には出さなかったけれど。
クスクスと笑っていると、御山くんが不思議そうな顔をした。
「あの人が来るたび女子が盛り上がってるし。小谷さん仲良いんだろ?本借りるとき、小谷さんなら…みたいなこと言ってたし」
「御山くんだって凄くモテてるじゃない。確かに知り合いだけど、私に貸してくれるのは千華へのちょっとした意地悪だよ」
「園田さんへの?」
尚更、不思議そうな表情になった彼に、千華には内緒って言われてるんだけど、と前置いて。