DUNK!
駐輪場までなんてたかだか50メートルちょっと。御山くんを独り占め出来る時間はすぐに終わってしまう。
渡り廊下から眺めているだけの時より、少しは距離が近づいてと思ったのに。
実際はそんなことないんだ、そう思ったら少し…結構悲しくなった。
「…じゃあ私、チャリあっちだから」
「あっ、ちょっと待って!」
自分の自転車に荷物をのせた彼は、慌てた様子でスマホを取り出した。青いカバーを着けただけのシンプルなスマホ。
「その本なんだけどさ、やっぱ読みたいし、もし良かったら園田さんの彼氏に借りて良いか聞いてもらえないかな」
「うん、私は全然構わないよ。でも私、千華の彼氏の連絡先知らないから千華経由になるけど」
「え、知らないの?」
「え、知らない…」
「そっか、そうなんだ…」
御山くんは幾度か頷くと、
「じゃあ園田さん経由で全然構わない。あと、小谷さんと連絡取りたいからケー番とメアド教えて貰える?」
「うん!」
二つ返事。断る理由なんてあるはずない。
私もスマホを取り出して連絡先を交換し合う。まさか彼のメアドを知れる日が来るなんて夢にも思わなかった。
やっぱり本当は少しだけ、御山くんに近づけているのかも知れない。
その後、校門まで自転車を引いて歩く。
門を出れば今度こそバイバイしなくちゃならない。何故なら彼と私は変える方向が真反対だからだ。
「今日は有難うな、また明日!」
「また明日ね」
「気を付けて帰れよっ、じゃあな!」
軽やかに自転車に跨がり颯爽と帰っていく彼を、心底カッコイイって思いながら見送った。
連絡先を交換した嬉しさでにやける顔を手で押さえてみるけど、無理みたいだ。
スカートがヒラヒラするのも全く気にならない私は、立ちこぎで力一杯こぎだした。