DUNK!
今、私はスマホとにらめっこしている。別に遊んでいる 訳じゃない。
時刻は夜の8時過ぎ、バイトが終わったはずの千華にメールを送ろうと思ったのだけれど。
「なんて打てば良いかな…」
未だかつて、千華へのメールの文明でこんなに悩んだことがあっただろうか。否、ない。
打っては消して、消しては打って、なかなか送れず早10分。
「…よしっ!」
ベッドの上で座り直す。キシリとベッドが文句を言ったようだが、それどころではない。
悩んでいたって仕方ないのだと意を決して、
「えいっ」
電話をかけた。
ドキドキする。親友に電話するのにこんな気持ちになったことがなくて戸惑う。
『もしもし?』
「もしも…、あれ?直斗さん?」
『ビックリさせて悪いな。千華はトイレ、ちなみに今コンビニな』
千華の彼氏、直斗さん。私も小学生の頃から知っている近所のお兄さん。口は悪いけど面倒見が良くて、結構優しい。
でも千華にはちょっと意地悪。
きっと電話を取ったのも、後で千華が文句を言ってくることを見越して、それをからかうためだろう。
つまり、好きな子ほど意地悪したいタイプ。
「本、有難うございます。あの、お願いがあるんだけど、」
『おう、何?』
「…バスケ部の男子が、この本、借りたいって言ってるの。貸しても良いかな?」
『構わねぇよ、つうかやるよ、その本。もう読まねぇし』
「いっ、良いの?」
聞き返しても、要らねぇから、と。なんと有難い!
お礼を言っていたら、千華が文句を言う声が聞こえた。
『もしもし千代?ごめんね、何か話したいことあるんでしょ?今車戻るから』
「直斗さんは?」
『コンビニの中。ガールズトークには邪魔でしょ?』
そう言って小さく笑う千華が、少し大人っぽく思えた。
千華はバイトのある日は、直斗さんに彼女の家まで車で送ってもらっているらしい。知らなかった。成る程、リア充ってやつね。
「…今日ね、御山くんと話せたの」
『ホント!?やったじゃない!詳しく聞かせてよっ』
まるで自分のことのように喜んでくれる千華に引っ張られるように、今日の放課後の出来事を洗いざらい話した。
千華と直斗さんのことを御山くんに言ったことも、謝って。
その時の彼の表情を見て、千華に、嫉妬したことも。
「ごめん…ごめんね、私」
「謝らないのっ、そんな必要ない!って言うかたぶんそれ…」