女装男子VS男装女子。
ひ~、とあたしは離れてくれそうもないあっくんに困っていると、誰かに手を引っ張られた。
ぐいっ
「へっ?!」
ポスンっと誰かの腕の中に納まる。
上を見上げて見ると、そこには何故か不機嫌な蓮がいた。
そして、あっくんと睨み合っている。
「……返してくんない?僕の桃」
「はぁ?誰のだって?」
「聞こえなかったの?神宮って耳悪いんだね」
「悪くねぇし。で、誰のだって?」
バチバチッ、とマンガだったらカミナリでも出そうなくらい、お互いを睨み合うあっくんと蓮。
間に挟まれているあたしは怖くてただじっとしているしかない。
「僕の桃って言ったの。聞こえた?早く僕の桃返してくんない?」
「お前のじゃねぇし。コイツはオレの奴隷なんだよ。そう易々とくれてやるわけねぇだろうが」
……あれ?
どぉしてこーんな険悪な雰囲気が漂っているのカナ?
…マジで怖いんですけど。
「てかさぁ、桃が嫌がってんの、見てわかんない?」
「はあ?嫌がってなんかねーよなあ、天野」
「え?!ここであたっ……俺にふるのかよっ!つうか普通に嫌だから。それ以前に暑苦しいし邪魔だから。お前に抱き締められてたら仕事ができねぇんだよ!いい加減離せやコラッ」
ギロッと蓮を睨む。
だけど、逆に睨み返されてしまった。
なんなんだよ全く!!
「ほら神宮。桃が嫌がってるのはわかったでしょ。早く離れて」
「ぜぇったい、い・や・だ」
「へぇ。僕にケンカうってんの?」
あっくんがヒヤリと冷たい笑顔で蓮を見る。
こわっ!
あたしがふたりに挟まれて怯えていると、「はいはーい!ふたりとも天野くんがだぁい好きなのはわかったから。でも今は文化祭だからさぁ、とりあえず仕事しようねぇ」と、にっこりとクラスの女子たちに言われた。
「そうだね。今は文化祭だった。みんなの言う通り、ちゃんと仕事しなくちゃ」
あっくんが思い出したかのように言った。
「神宮も、早く桃から離れて仕事しなよ。じゃあ桃、仕事頑張ろうね。あっ、いい忘れてたけど、そのメイド服、すごく可愛いよ。桃によく似合ってる」
それだけ言うと、あっくんは接客をしに行った。