女装男子VS男装女子。
あっくんとそんなことをしている間にも、確実にあたしに近付いて来る蓮。
「天野!聞けよ!」
嫌だ嫌だ聞きたくなんかねぇよ!
あたしはあっくんの側に寄りながら、蓮の声が聞こえないようにと耳を手で塞ぐ。
「おい!」
あー、あー、きーこーえーなーいー!!
これは幻聴。
現実じゃないの。だってあたしは耳を塞いでるんだから、蓮の声が聞こえるわけないじゃないの。
もう、あたしってば疲れてるのかなあ?
こぉんなに聞きたくない蓮の声が聞こえるなんて、最悪だよ。
はっ!もしかして、これは夢!?
「夢なん「夢じゃねーよ」」
ヒッ!
あたしの肩がビクリと跳ね上がる。
耳を塞いでいたはずの手は、誰かの手に外されていて。
何故かわからないけれど、あたしの手はがっしりと逃げられないように掴まれていて。
しかもあたしの現実逃避を否定したこの声は…………
あたしの知る限り一人しかいない。
ギギギギと音がするような動きであたしは後ろを振り返る。
そこには……
「オレを無視するとかどういうこと?なあ、天野?」
青筋をたてた鬼(あ、間違えた蓮だった)がいました。