女装男子VS男装女子。
「べ、べつに無視なんかしてないし!」

「ふーん?じゃあなんで五十嵐の方にいるわけ?」

「いたいからだよね、桃。そんなこともわかんないの?神宮って、頭弱いんだね」

あたしに詰め寄る蓮に、バカにするように笑うあっくん。

あ、あっくんってば!
そんなこと言ったら蓮が……

「はあ?お前何言ってんの?つーか五十嵐には聞いてないんだけど」

……やっぱり。

ギロリとあっくんを睨む蓮。

あーぁ、めんどくさいことになっちゃった……
てか、あっくんわかってて蓮のこと挑発したよね?
絶対、わかってたよね?

気になってあっくんをじーっと見る。

「僕は本当のことを教えてあげただけだよ。それもわかんないなんて、神宮の頭は末期だね」

「あぁ!?いい加減なこと言ってんなよな!」

「べつにいい加減じゃないけど。……ん?どしたの桃」

あたしの視線に気づいたあっくんが、あたしに聞いてくる。

「……あっくんさ、わかっててやってるでしょ」

「え、なんのこと?」

そう言って、フフッと含み笑いをするあっくん。

………………。

絶対わかっててやってるね。
確信犯だよね、あっくん。
しかもなんかすんごい楽しそうだし?

「おい、オレを無視すんじゃねぇよ!」

「うるさいな、静かにしてよ。鼓膜が破けちゃうでしょ」

「破けるかっ!」

くだらない言い合いを始めるあっくんと蓮。

……ほっ。

あたしは息をつき、胸を撫で下ろした。

あっくんと言い合いを始めてくれたお陰で、あたしのことは頭から消えているみたいだ。
このままずっと、あたしへの用なんて、忘れてしまえばいい。

……蓮に対する気持ちも、よくわかってないんだから。

本当、なんなんだろう。
このドキドキは。

蓮を見るとキュンと疼くこの胸はーーーーーー
ーーー………

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