女装男子VS男装女子。
ベタンッ
そんななんとも言えない音を出して、あたしは転んだ。
「……大丈夫?フフフッ」
あっくんが口を押さえながら、もう片方の手をあたしに差し伸べる。
口押さえてても笑い声聞こえるからね。
あぁ恥ずかしい。
周りの人もクスクス笑ってるしさ!
あたしは羞恥心で顔を真っ赤にしながら、あっくんの手を借りて立ち上がった。
ズルッ……
「あ」
あっくんの間抜けな声がする。
「ん?」
なんだ?どうした?
キョロキョロと周りを見回して見るが、みんなあっくんと似たようなリアクションをしていた。
「……なに?どうしたの?」
そうあっくんに尋ねると、
「…………桃、カツラ」
「ん?カツラ?」
あっくんが、あたしの足の先にある黒い物体を指差す。
なに言ってんの?
カツラはちゃんとあたしの頭に……
ない。
「え、は、あれ?なんで!?」
自分の頭をさわさわと触りながら、確かめる。
が、カツラらしき感触はない。
しかも、あたしはカツラの下で髪を結んでいないから、カツラのない頭は髪の毛を閉まっていることができなくて、そのまま出てしまっている。
長い髪があたしの頬に掛かった。
恐る恐るあっくんの指差す黒い物体を見てみると、そこにはあたしが今まで着けていたであろうカツラが。
「…………マジ?」
「……マジ、みたいだよ桃」
え、ちょ、ちょっと待ってこれって……
かなりヤバくね??
周りからの視線があたしに集まってくる。
「え、なにアレ」
「カツラ?」
「なんでそんなものが……」
「てゆうか……
天野って女?」
……………………………………。
バレてーら!
て、そんなこと呑気に言ってる場合でもなくて!
「ど、どうしようあっくん!ば、バレちゃった!!?」
あっくんもよく状況が呑み込めてない様子だった。
「と、とにかく……桃、ここから逃げるよ」
ぐいっとあっくんに腕を引っ張られた。
「ぅえええぇぇえ!?マジですかーーーっ!!??!」
あたしの絶叫が、校内に響き渡った。