女装男子VS男装女子。
「あぁ~…」
「なんだよ。カツラなんてなかっただろ?」
ほらみろ、とでも言うように、蓮がものすごいどや顔をする。
……うっぜぇ。
「あーあーそうですね。蓮の言うとおりでしたよー……クソが(ボソッ」
「……」
「取り敢えず、部屋、出てって貰えませんかね?あたしこれから着替えなくちゃいけないんで。あ、それともあたしの生着替えが見たいとか?やだー蓮ってヘンタイー…警察に通報されちゃえば?」
最後の方は真顔で言ってやった。
「ちょ、今すぐ出てくから!てか、お前何着てくわけ?」
「制服だけど」
当たり前でしょ。
バカにしたように蓮を見つめる。
「お前、もう女だってバレてるのに男子制服着んのか?」
「そうだけど。だってあたしそれしか持ってないし」
別に着れればそれでいいしね。
「じゃ、オレの制服着ろよ」
「は? なんで?蓮のだって男子制服じゃん」
「お前バカか?頭いいのにバカなのか?オレが女装してたときの制服があんだろうが」
そう言われ、ちょっと前の蓮を思い出してみる。
あー……そういえば蓮って女装してたな。
しかも超美少女。
そしてまだその時はあたしは蓮が嫌いだったっけ。
今のあたしが蓮のこと好きって言ったら、前のあたしはすんごい驚くんだろうなー。
驚くあたしの姿が目に浮かぶ。
「天野ー?おーい」
ブンブンとあたしの目の前で手を振る蓮。
「……あんた何してんの?」
「天野が違う世界に意識飛ばしてるみたいだったから。現実に引き戻した?」
「いや聞かれてもしらねぇよ。つうかあんたの制服って、あたし着れるかな」
ブカブカだったりしない?
そう聞くと、「身長たいして変わんねぇから、たぶん大丈夫」となんとも曖昧な解答が返ってきた。
そのまま蓮は制服を取りに行き、蓮の出ていった部屋は一気に静かになった。
「朝っぱらからうるさいんだから……」
そう言ってはみたものの、緩む頬は隠せなかった。
……朝から好きな人の顔を見れるなんて、なんかイイ。
って!
あたしはどこの乙女だよ!!
恥ずかしくなり枕をポカポカと殴る。
バフンッと枕に顔を押し付けていると、蓮が制服を持って入ってきた。
「………何してんの?お前……」
「別に、なにもしてない」
いつもどおり、済ました顔で答える。
「ま、なんでもいいけど。さっさと着替えろよ。時間あんまねぇから」
「わかった」