花の音色〜チョコの香りをいつかまた〜
「……美味しい、ですか?」
「あ、サクラさんも食べます?」
「ええっ、私はいいですよぅ。
だってこれは樹さんのものじゃないですか。どうか気にしないで下さい」
ね? なんてにこやかに言ってのけた彼女の視線が痛い。
かなり樹に突き刺さっている。
「……サクラさん、はいっ」
サクラの前にはでんっと差し出されたポッキー。
サクラは自分の欲求と戦うことを余儀無くされた。
「あ、う、だってこれ最後の一本でしょう……?」
「いいんです、僕はサクラさんが喜んでくれる方が嬉しいので」
はにかむ天然タラシ、樹。
サクラはぷしゅう、と音を立ててしまいそうなほど顔一面を赤く染めた。