君が嘘をついた理由。
ガタガタと部屋を出て行ったり、戻ってきて棚を触ったり、忙しく動く男をぼんやりと見ていた。一通り動き回って、気付けば机の上に並んでいく応急処置グッズ。
「はい、手出して」
私の目の前に座った男は濡れタオル片手に手を差し伸べる。
黙って右手を差し出すと、傷を手当し始めた。自然と視界に入るその人。明るい部屋の中で見る男。
黒髪は前髪が少し長く、インテリメガネにかかっている。
大きすぎない綺麗な二重の目。
傷を見つめるその顔は、自分が負ったかのように痛そうに歪んでいる。
ケガしているのは、私なんだけどな。あなたは痛くないでしょ。
これっぽっちも。