君が嘘をついた理由。

黙って出て行ったのに、全部知っていたのに怒ることもなくて「元気ならいい」って。


なんで、怒らないの。なんで、そんなに優しいの。―――会いたい。


会いたいよ。

先生は教室の鍵を手に取り、

視線で出ろ、と言われる。

「……ありがとうございました」


私は頭を下げて、教室を飛び出した。

廊下をできる限り走って、


階段を駆け上がって、教室へと飛び込む。


辞書片手に勢いよく教室へ入った私を、

教室で尾へ湾頭を食べている生徒が一瞬注目したけど、

すぐに元に戻る。

そのまま鞄に辞書を放り込むと、代わりに財布だけひっつかんで、また教室を出た。






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