極上の他人


「頭がおかしいかどうかはわからないけど、喜ばせたいだけなんだよ。でも、結構一途でけなげだぞ」

「けなげなんて、自分で言う……?」

輝さんの余裕ある態度にどきりとした。

私を見つめたままくすくす笑う姿は見栄えがいい。

店内にいる女性客の視線が集まるのも納得できるけれど。

時折周囲に視線を投げては意味ありげな瞬きを送る様子を見せられて、仮にもお見合いという場に出向いた私がいい気分になるわけもない。

私の問いに、何も答えてくれない態度ももどかしい。

「あの、真面目に話してもらえないのなら、もう結構です。
この釣書と写真は亜実さんに突っ返してお見合いは決裂だと伝えておきます。
お見合いが嫌だからって、ふざけた言葉で私を追い返そうとするなんて、ひどいです。
……亜実さんの知り合いだっていうからもう少しマシな人かと期待していたのに。残念です」

本当、亜実さんの知り合いだから、ちゃんと話が通じる人かと思っていたけれど、そんな簡単な人じゃなかった。

お見合いする気なんてないと遠回しに言っているようだし、私をからかうように『かわいらしい』って言うのも、どこかおかしい。

お見合いが嫌だったのなら、最初からはっきりと断って、わざわざ私を店に呼び出すなんてことしないで欲しかった。



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