極上の他人
そんな私の気持ちを隠しながら輝さんに視線を向けると、思いのほか面白そうに口元を緩めている表情とぶつかった。
「誠吾先輩、史郁のことがからむと常識はずれなことも平気でするからな。
昔から、仲間内で呆れられることも多かった」
くすくすと声をあげる輝さんだけど、誠吾兄ちゃんに頼まれれば拒むなんてできなかったはずだし、暗証番号なんて知りたくなかったに違いない。
万が一私に何かがあったとしたら、たとえそれが直接輝さんのせいではないにしても誠吾兄ちゃんへの罪悪感は拭えないだろう。
わざわざ面倒の種を引き受けたくないだろうし、責任も持ちたくないに違いない。
それに、私と会いたかったからだといっても、お見合いを受けるなんて。
「私とのお見合いは、偶然……?」
思わず小さな声で問いかけた。
輝さんは視線をさまよわせた。
「偶然だって言ったら信じるか?亜実さんからの見合いの話は今までも何度かあったけど、その度に断っていたんだ。
まだ結婚するつもりもないし、仕事を優先したい気持ちの方が強いからな。
亜実さんはそんな俺に意地になって何回も写真を持ってきては見合いをすすめていた」
「想像できる……」
思わずくすっと笑ってしまった。